Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

きんぎょ

金魚

豊島 与志雄

Lisez 金魚 (きんぎょ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 3 765 caractères · 8 écrans

Aozora Bunko

そして馳け出した。後から、叫び声とも笑い声ともつかない大勢の声が響いてきた。彼は我を忘れて馳けた。

下宿の側まで来ると、彼は初めて我に返った。両手には金魚を握りしめていた。掌にねとねとした不気味な感触があった。見ると、右手の金魚は腹が裂けて臓腑が出ていた。彼はぞっとして、金魚の死骸を其処に落した。金魚は鰭を張って、生きてるかのように立っていた。彼は嫌な気がした。足先で溝の中に蹴やると、汚い汚水の中に、臓腑のはみ出た大きな腹だけが、ぽかりと浮き出して見えた。眼を外らすと、左手にはまだ一匹の金魚を握っていた。

彼はそれを力強く溝の中に投げ込んだ。金魚は沈んだまま出てこなかった。然し初めの浮いてた奴の方は、どうにも仕様がなかった。彼は石を拾って投げつけた。大きな腹がぷかりぷかりと水に揺られて、向うへ流れて行った。そのうちに彼はたまらなく嫌な気持になった。

思い切って立ち去ると、掌が両方共ぬるぬるしていた。我慢が出来なかった。傍の電柱に掌をなすりつけた。

彼はぼんやり考え込んだ。而も何を考えてるのか自分でも知らないで、下宿に帰った。石鹸で手を洗ってると、先刻の沈んだまま出て来なかった金魚は、生きてたのではないかしらという気がしてきた。