Classiques japonais avec furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lisez 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 14 957 caractères · 31 écrans
一見、まことに不可思議な事件であっても、それはみな、一言の下に明かにすることができる――「偶然事」という簡単な言語で。
否、不可思議な出来事であれば、あるほど、その連鎖に、偶然の力が色濃く働いていて、いっそう解決は容易なのである。
釘抜藤吉は、漠然とだが、いつも、こんなようなことを考えていた。岡っ引藤吉の、岡っ引らしい、これが、唯一の持論だったと言っていい。
が、この竜手様の一件だけは、その最後まで考え合わせると、ただ単なる偶然として、片づけ去ることのできないものがあるように、思われてならない。
「薄っ気味の悪い不思議だて――。」後あとまで、藤吉はよくこう呟いて、首を捻ったと言う。不思議ということばを、釘抜藤吉は、はじめて口にしたのだった。
偶然を、藤吉親分は、巡り合わせと呼んでいたが、そのめぐりあわせだけでは説き得ない、割りきれないものが、藤吉の心に残ったに相違なかった。
惣平次は、しなだれて、押入れを開けた。奥へ這い込むようにして、しばらく押入れ中ごそごそ言わせていたが、やがて、発見け出した竜手様を、汚なそうに、怖ろしそうに、指さきに挾んで、腰を伸ばした。