Classiques japonais avec furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lisez 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 547 caractères · 27 écrans
無言。ひとしきり雷鳴。灌木の繁みや草の葉から、大粒な水玉が音を立てて霰と散る。藤吉は寝呆けたような顔を上げた。
「佐平次どん――てったけのう、お前さんは。」
「へえ佐平次でございます、鋳掛屋の佐平次でございますへえ。」
「犬が見つけたてなあどういうわけですい。」
「へえ。あっしがこの犬を伴れてこの前面の往来を通りかかりますてえと――。」
藤吉はつと手を振って佐平次を黙らせた。
「俺たちが来るまでお前このわたりに何一つ手をつけやしめえの。」
佐平次は頷首いた。屍体の上へ馬乗りに股がって、藤吉は灯を近づける。
草加屋伊兵衛は胸に一本の折矢を立てて、板のように硬張って死んでいた。傷は一つ、左襟下を貫いているその太短い矢だけだが、夥しい血が雨合羽の上半身と辺りの土や草を染めて、深く心の臓へ徹っていることを語っていた。香いを利くように藤吉が顔を寄せて、矢と傷痕を白眼んでいると、佐平次は話を続ける。勘次と彦兵衛、右大臣左大臣のように左右に分れて、静かに仏を見守っていた。
「金春屋敷の知人んとこで話が持てましてね、あっしが甚右を連れて此町を通ったのは四つ過ぎてましたよ。