Classiques japonais avec furigana
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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Lisez 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) de 林 不忘 (はやしふぼう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 13 547 caractères · 27 écrans
つづいて咬みつくような甚右衛門の声がした。それが家の周囲を駈け廻って火のつくように吼え立てたのだから、義理にも真似にも小鬢が枕についてはいない。かっとした勘次が薪雑棒を引っ掴んで飛び出そうとすると、藤吉はそれを押し止めて、起きてゆっくり帯を締め直した。そして彦兵衛に戸を開けさせたが、猛り狂った甚右衛門は、血を吐くような鳴声を揚げて、からくり仕掛みたいに格子の敷居を境いに、跳び込んだり躍り出たり、眼に哀訴嘆願の色を見せて戸外へ人を誘おうとする。もはや一刻も猶予はならないと、藤吉は尻をからげた。
「おっ、野郎ども、仕度しろ。」
「え? お出ましでごぜえますか。」
「うん。」
「どちらへ。」
「はて、そいつあ甚右衛門に訊いてくんねえ。」
「だが親分、高が犬ころが逆上ってるだけ、それにこの大暴風雨、悪いこたあ申しませんぜ、お止めなすっちゃいかがですい。」
「こう、乙に理解をつけやがったのう。俺らあな、虫の報せがあるんだ。あらしがなんでえ、何で、なあんでえ! へん、紙子細工や張子の虎じゃあるめえし、べら棒め、濡れて落ちるよな箔じゃあねえや。柄にもねえ分別するねえ。」
親分藤吉一流の手だ、こう真正面にどやしつけられては、江戸っ子の手前勘次と彦兵衛、即座に仏頂面を忘れて、勇みに勇んで駈け出さざるを得ない。