Classiques japonais avec furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lisez 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 106 745 caractères · 216 écrans
そこは浅草馬道であった。
「お色め、今頃どうしているだろう? まだ妾にはゆくまいな。ちょっと様子を見たいものだ。別れた、女の様子を見る。未練と人はいうだろう。だが幸い人気がない。おりから深夜で月ばかりだ。月に見られたって恥ずかしいものか。しかも春の朧月、被衣を、冠っておいでなさる」
観音堂の方へ歩いて行った。昼は賑やかな境内も、人影一つ見えなかった。家々の戸は閉ざされていた。屋根が水でも浴びたように、銀鼠色に光っていた。巨大な公孫樹が立っていた。その根もとに茶店があった。すなわちお色の住居であった。犬が門を守っていた。と尾を振って走って来た。よく見慣れている弓之助だからで、懐しそうにじゃれついた。「おおよしよし」と頭を撫でた。「犬の方がよっぽど人間らしい。さて何かやりたいが、小判をやってもし方がねえ。その他には何んにもないお気の毒だがくれることは出来ねえ。……お色め、今ごろいい気持ちで、グッスリ眠っているだろう。そう思うといい気持ちはしねえ。間もなく田沼の皺くちゃ爺に、乳房を自由にされるんだろう。こいつは一層いい気持ちがしねえ。だがひょっとするとおれの事を案じて眼覚めているかもしれねえ。