Classiques japonais avec furigana
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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Lisez 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 106 745 caractères · 216 écrans
やがて紋太郎は立ち上がった。
「熊谷まではまだ遠い。上尾、桶川、鴻ノ巣と。三つ宿場を越さなければならない。どれ、そろそろ出かけようか」
腰を延ばしてハッとした。喜撰法師の軸がない! 桐の箱へ納め布呂敷で包み膝の上へ確かに置いた筈の、その喜撰がないのであった。
「ううむ、やられた! おのれお菊!」
「おお旦那様、もうお帰りで。これはお早うござりました」
用人の三右衛門はいそいそとして若い主人を迎えるのであった。
「今帰ったぞ」と紋太郎は機嫌よく邸の玄関を上がった。手に吹矢筒を持っている。部屋へ通るとその後から三右衛門が嬉しそうに従いて来た。
「首尾はいかがでござりましたかな?」三右衛門は真っ先に訊く。
「首尾か、首尾は上々吉よ」旅装を解きながら元気よく云う。
「それはまあ何より有難いことで。で何程に売れましたかな?」
「何も俺は売りはせぬ」
「何をマアマアおっしゃいますことやら。知行所の総括嘉右衛門へ値をよく売るのだとおっしゃって、ご秘蔵の喜撰様を箱ながらお持ちになったではござりませぬか」三右衛門は顔を顰めながらさも不安そうに云うのであった。
「ああなるほど喜撰のことか。