Classiques japonais avec furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lisez 錦木 (にしきぎ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 481 caractères · 103 écrans
と重なり合って泣いて居ると、
「世の中に私ほどはかない事をたよりに生きて居る人はないだろう。私はもうじき死んででも仕舞う」
と云う言葉の末は涙にききとれないほどであった。日の落ちるまで光君は淋しさ、悲しさにたえられないと云うようにして居られたが夜に入ってから只一人うつむき勝に病上りのようにフラフラしながら細殿をあてどもなくさまよって居るといきなり女らしいなまめいた香に頭を上げて見ると光君の躰は目に見えない何物かに引かれて西の対へ来て居た。光君は去りにくい心持になって若しや彼の人の声はしないかしら、童にでも合えばなどとあてどもないことをたよりにしずまった細殿を行ったり来たりして居ると傍の部屋ではしゃいだ女の声で高らかに人の噂をして居るのがハッキリ聞える。
「この間の宴の時に弟君の下に居た方をお知りかえ、何と云う妙な方だったろう」常盤の君の声である。
「誰だって気がついて居りましたでしょう」
「中びらな御かおで」
「お歯がらんぐいで」
「出目で」
「毛がおうすくて」
「お色がくろくて」
と別々な声で云って崩れる様に笑って居る。此の間の晩の事を思い浮べて又今の話をきいて身ぶるいの出るほどいやな心持になった光君はそこをはなれてしずかに更けて行く庭の夜景色を欄干によって見て居られたがさとくなった耳にフト何とも云われなく美くしい琴の音