Classiques japonais avec furigana
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にしきぎ
錦木
宮本 百合子
Lisez 錦木 (にしきぎ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 481 caractères · 103 écrans
紅は殿の今いった言葉がその意味以上にようわかった。
「大丈夫でございます」
シャンとした気丈な様子をしてそのあとにつづいて池に降りた。
向う岸にならんで居る木の小さく見えるほどの大きさ、まわりの草は此の頃の時候に思い思いの花を開いてみどり色にすんだ水と木々のみどり、うすき、うす紅とまじって桔梗の紫、女郎花の黄、撫子はこの池の底の人をしのばすようにうす紅にほんのりと、夜露にしっとりとぬれてうつむいて居る。
かおの白い衣の美くしい人達はその中に足元をかくして立った。池の面は人々のかなしみも何にも知らぬがおにしずかにみちて居る。すくい上げられた紫の君の着物はその裾からつゆをしたたらしながらわきの柳の枝にかけられて居る。人達は一まわりズーッと見まわしてから目をつぶった、□□□の口からはかすかな祈りのこえがもれて居る。紅は□にぴったりとすわって、深く人よりも大きなことを祈るように目をねむったまま動かなかった。
「このままにして置いて御呉れ、一寸でもの水をさわがせない様にネ……」
殿はまわりのしずけさをやぶってわきに居る男に云いつけた。
いつまで立ちつくしても思いはつきないと云うように人達は立ちつくして居る。