Classiques japonais avec furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lisez 鎧櫃の血 (うし) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 702 caractères · 99 écrans
しかもここに怪しい噂が起った。かの鯉を生捕ったのは新堀河岸の材木屋の奉公人、佐吉、茂平、与次郎の三人と近所の左官屋七蔵、桶屋の徳助で、文字友から貰った一朱の銀で酒を買い、さかなを買って、景気よく飲んでしまった。すると、その夜なかから五人が苦しみ出して、佐吉と徳助は明くる日の午頃に息を引取った。それがあたかも鯉の死んで浮かんだのと同じ時刻であったというので、その噂はたちまち拡がった。二人は鯉に祟られたというのである。なにかの食物にあたったのであろうと物識り顔に説明する者もあったが、世間一般は承知しなかった。かれらは鯉に執り殺されたに相違ないという事に決められた。他の三人は幸いに助かったが、それでも十日ほども起きることが出来なかった。
その噂に三右衛門も心を痛めた。結局自分が施主になって、寺内に鯉塚を建立すると、この時代の習い、誰が言い出したか知らないが、この塚に参詣すれば諸願成就すると伝えられて、日々の参詣人がおびただしく、塚の前には花や線香がうず高く供えられた。四月廿二日は四十九日に相当するので、寺ではその法会を営んだ。鯉の七々忌などというのは前代未聞であるらしいが、当日は参詣人が雲集した。