Classiques japonais avec furigana
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くにさだえがく
鏡花短篇集 川村二郎編
泉 鏡花
Lisez 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 644 caractères · 40 écrans
「の、そうさっしゃいよ。」
「なるほど。」
「他の事ではない、あの子も喜ぼう。」
「それでは、母親、御苦労でございます。」
「何んの、お前。」
と納戸へ入って、戸棚から持出した風呂敷包が、その錦絵で、国貞の画が二百余枚、虫干の時、雛祭、秋の長夜のおりおりごとに、馴染の姉様三千で、下谷の伊達者、深川の婀娜者が沢山いる。
祖母さんは下に置いて、
「一度見さっしゃるか。」と親父に言った。
「いや、見ますまい。」
と顔を背向ける。
祖母は解き掛けた結目を、そのまま結えて、ちょいと襟を引合わせた。細い半襟の半纏の袖の下に抱えて、店のはずれを板の間から、土間へ下りようとして、暗い処で、
「可哀やの、姉様たち。私が許を離れてもの、蜘蛛男に買われさっしゃるな、二股坂へ行くまいぞ。」
と小さな声して言聞かせた。織次は小児心にも、その絵を売って金子に代えるのである、と思った。……顔馴染の濃い紅、薄紫、雪の膚の姉様たちが、この暗夜を、すっと門を出る、……と偶と寂しくなった。が、紅、白粉が何んのその、で、新撰物理書の黒表紙が、四冊並んで、目の前で、ひょい、と躍った。
「待ってござい、織や。