Classiques japonais avec furigana
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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
Lisez 雪と泥 (ゆきとどろ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 19 993 caractères · 40 écrans
「たぶん、よくある話だと思うだろう、どう云ったらいいかわからないが」折之助は口ごもり、手の甲で額を撫でた、「初めて見たとたんなんだ、まだ口もきかないうちに、ひと眼、顔を見たとたんに、ああと思った、まぎれもないこの人だ、――何十年も別れていたあとでようやく逢えた、やっとめぐり逢うことができた、この人だ、――いってみればそんなような気持だった」
「何十年も別れていたって」
「その娘も同じように云っていた、二度めのときだったが、いままで嫁にゆかないでいてよかった、ずいぶん縁談があったけれども、自分にはもっとほかに人がいるような気がして、どうしても承知することができなかった、それが貴方を見たときに、すぐに、――」折之助は眼を伏せながら声をひそめた、「こう云って、娘はながいこと泣いた」
主馬は折之助を見た。
「その娘の家は商人だって」
「小伝馬町の美濃庄といって、太物問屋では指折りの商人らしい、娘がちょっと立ったとき、お勝という下女がそう云っていた」
「もちろん慥かめやしないだろうな」
「その店をか、どうして」と折之助は友の顔を見た、「ああ、まだ伊丹には信じられないんだな」