Classiques japonais avec furigana
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ゆきのよる
雪の夜
織田 作之助
Lisez 雪の夜 (ゆきのよる) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 11 221 caractères · 23 écrans
が、それ以上に、坂田は随いて来たことを、はじめから後悔していたのだ。もぞもぞと腰を浮かせていたが、やがて思い切って、坂田は立ち上った。
「お先に失礼します」
伝票を掴んでいた。
「ああそらいかん」
松本はあわてて手を押えたが、坂田は振り切って、
「これはわてに払わせとくなはれ」
と、言った。そして、勘定台の方へふらふらと行き、黒い皮の大きな財布から十銭白銅十枚出した。一枚多いというのを、むっとした顔で、
「チップや」
それで、その夜の収入はすっかり消えてしまった。
「そんなら、いずれまた」
もう一度松本に挨拶し、それからそこのお内儀に、
「えらいおやかまっさんでした。済んまへん」
と悲しいほどていねいにお辞儀して、坂田は出て行った。松本は追いかけて、
「君さっき大阪へ帰りたいと言うてたな。大阪で働くいう気いがあるのんやったら、僕とこでなにしてもええぜ。遠慮なしに言うてや」
と言って、傘の中の手へこっそり名刺を握らせた。女の前を避けてそうしたのは、坂田に恥をかかすまいという心遣いからだと、松本は咄嗟に自分を甘やかして、わざと雪で顔を濡らせていた。が、実は坂田を伴って来たのは、女たちの前で坂田を肴に自分の出世を誇りたいからであった。