Classiques japonais avec furigana
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ゆきしろやまめ
雪代山女魚
佐藤 垢石
Lisez 雪代山女魚 (ゆきしろやまめ) de 佐藤 垢石 (さとうこうせき) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 9 297 caractères · 19 écrans
一
奥山の仙水に、山女魚を釣るほんとうの季節がきた。
早春、崖の南側の陽だまりに、蕗の薹が立つ頃になると、渓間の佳饌山女魚は、俄に食趣をそそるのである。その濃淡な味感を想うとき、嗜欲の情そぞろに起こって、我が肉虜おのずから肥ゆるを覚えるのである。けれど、この清冷肌に徹する流水に泳ぐ山女魚の鮮脂を賞喫する道楽は、深渓を探る釣り人にばかり恵まれた奢りであろう。水際の猫楊の花が鵞毛のように水上を飛ぶ風景と、端麗神姫に似た山女魚の姿を眼に描けば、耽味の奢り舌に蘇りきたるを禁じ得ないのである。
青銀色の、鱗の底から光る薄墨ぼかしの紫は、瓔珞の面に浮く艶やかに受ける印象と同じだ。魚体の両側に正しく並んだ十三個ずつの小判型した濃紺の斑点は、渓流の美姫への贈物として、水の精から頂戴した心尽くしの麗装に違いない。しかも藍色の背肌に、朱玉をちりばめしにも似て点在する小さく丸い紅のまだらは、ひとしお山女魚の姿容を飾っている。黒く大きい、くるくるとした眼、滑らかに丸い頭、あらゆる淡水魚のうち、山女魚ほどの身だしなみは、他に類を求め得られまいと思う。
渓のなぎさに、葦の芽がすくすくと伸びた早春の頃は、数多く山女魚が釣れる。