Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

せいしゅんのぎゃくせつ

青春の逆説

織田 作之助

Lisez 青春の逆説 (せいしゅんのぎゃくせつ) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 593 caractères · 325 écrans

Aozora Bunko

豹一は眼をつぶった。

「はあッ」産婆の掛声に豹一は眼をひらいた。友子の低い鼻の穴が大きくひらいた。その途端、赤児の黒い頭が豹一の眼にはいった。そして、まるくなった体がするすると、出て来た。

産声があがった。豹一は涙ぐんだ。いままで嫌悪していたものが、この分娩という一瞬のために用意されていたのかと、女の生理に対する嫌悪がすっと消えてしまった。なにか救われたような気持だった。

「よかった。よかった」と、いいながら、部屋のなかをうろうろ歩きまわった。

「じっとしてんかいな」母親が叱りつけた。

豹一はふと膝のあたりに痛みを感じた。枕元に鋏が落ちていて、豹一はその上に膝をついていたのだった。

その日、産声が空に響くようなからりとした小春日和だったが、翌日からしとしと雨が降り続いた。四畳半の部屋一杯にお襁褓が万国旗のように吊された。

お君は暇を盗んでは、豹一のところへしげしげとやって来た。

火鉢の上へかざしたお襁褓の両端を持ちあいながら、豹一とお君は、

「乳母車を買わんならんな」

「そやな」

「まだ乳母車は早いやろか」

そんな風なことを話しあった。やがて、お君は、

「早よ帰らんと叱られるさかい、帰るわ」