Classiques japonais avec furigana
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かばんのかい
革鞄の怪
泉 鏡花
Lisez 革鞄の怪 (かばんのかい) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 394 caractères · 21 écrans
容体がさも、ものありげで、鶴の一声という趣。き騒いで呼立てない、非凡の見識おのずから顕れて、裡の面白さが思遣られる。
うかうかと入って見ると、こはいかに、と驚くにさえ張合も何にもない。表飾りの景気から推せば、場内の広さも、一軒隣のアラビヤ式と銘打った競馬ぐらいはあろうと思うのに、筵囲いの廂合の路地へ入ったように狭くるしく薄暗い。
正面を逆に、背後向きに見物を立たせる寸法、舞台、というのが、新筵二三枚。
前に青竹の埒を結廻して、その筵の上に、大形の古革鞄ただ一個……しても視めても、雨上りの湿気た地へ、藁の散ばった他に何にも無い。
中へ何を入れたか、だふりとして、ずしりと重量を溢まして、筵の上に仇光りの陰気な光沢を持った鼠色のその革鞄には、以来、大海鼠に手が生えて胸へ乗かかる夢を見て魘された。
梅雨期のせいか、その時はしとしとと皮に潤湿を帯びていたのに、年数も経ったり、今は皺目がえみ割れて乾燥いで、さながら乾物にして保存されたと思うまで、色合、恰好、そのままの大革鞄を、下にも置かず、やっぱり色の褪せた鼠の半外套の袖に引着けた、その一人の旅客を認めたのである。