Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lisez 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 12 494 caractères · 26 écrans
顎十郎は恐悦しながら盃を取りあげ、
「金蔵の番人には、チト行きすぎたお款待。生れつき遠慮ッ気のないほうだから、会釈なしにやっつけますが、美禄に美人に美肴と、こう三拍子そろったんじゃ、いかに臆面のない手前でも顔まけをいたします。……おっとっと、散ります、散ります」
大有頂天の大はしゃぎ。太平楽をならべながら頻りに注がせる。
ところでこの小波、注ぎっぷりもいいが、受けっぷりもいい。どうぞ、ほんの少し、と言いながらいくつでも受ける。ひどく調子がいいもんだから、いきおい弾みがついて、だいぶ陽気な光景になる。下町からあがった腰元とみえ、酔うにつれて、小さな声で小唄なんか歌う。ところで、顎十郎のほうも、もとをただせばそうとうな道楽者なんだから、すっかりウマが合う。引きぬきになって、
「それ、ご返盃ッ」
「ちょうだいしますわ」
てなわけで、差しつおさえつやっていたが、そのうちに小波が、ちょっと、といって足もとをひょろつかせながら出て行ったが、それっきりいつまでたっても戻って来ない。
酒も切れ、肴も荒してしまった。そのうちに出て来るだろうぐらいに考えて、なすこともなくぼんやりしていたが、いっこうに帰って来るようすもない。