Classiques japonais avec furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lisez 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 028 caractères · 30 écrans
思召しは千万かたじけのうございますが、平に御辞退……」
客は、へどもどして、
「いや、いや、決してそういう次第ではございません。つづめて申そうなら、主家の浮沈にもかかわる一大事……」
顎十郎は頭をかかえて、
「そりゃア大変だ。そんな大事では、とても手前などの手にはあいかねましょう。なにしろ……」
と、またぺらぺらと来そうなので、客はあわてて、しばらくしばらくと喰いとめ、
「それでは御謙遜にすぎましょう。……このほどの丹頂のお鶴の件、また堺屋の騒動。隠微夢中のなかから真相を摘抉して、さながら掌のなかをさすごとき明察御理解。……実は、そのお力によって主家一期の危難をおすくいねがいたいと存じ……」
というと、田舎くさく真四角になり、
「手前姓名の儀は、さきほど名札をもって申しあげました通り、岩田平兵衛……。関東のさる藩の禄をはむものでございますが、……卒爾ながら、手前主人の名の儀は……」
「ははあ」
「なにとぞ、御容赦くださるよう」
きっと顔をあげ、必死な目つきで、
「お聞きすみ願われましょうか」
顎十郎は、あっさりとうなずいて、
「いや、いかにも承知しました。……そういうことなら、関東とさえおっしゃることはいりませんでした。