Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しょくま

食魔

岡本 かの子

Lisez 食魔 (しょくま) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 36 911 caractères · 74 écrans

Aozora Bunko

霰が降る。深くも、粘り濃い闇の中に。いくら降っても降り白められない闇を、いつかは降り白められでもするかと、しきりに降り続けている。

夜も更けたかして、あたりの家の物音は静り返り、表通りを通る電車の轟きだけがときどき響く。隣の茶の間で寝付いたらしい妻は、ときどき泣こうとする子供を「おとうさんがおとうさんが」と囁いて乳房で押て黙らせ、またかすかな寝息を立てている。鼈四郎が家にいる間は、気難しい父を憚り、母のいうこの声を聞くと共に、子供は泣きかかっても幼ごころに歯を食い縛り、我慢をする癖を鼈四郎は今宵はじめて憐れに思った。没くなった父の老僧は、もし子供が不如意を託って「なぜ、こんな世の中に自分を生んだか」と、父を恨むような場合があったら、「こっちが頼みもしないのに、なぜ生れた。お互いさまだ。」といって聞かせと、母にいい置いたそうだが、今宵考えてみれば、亡父は考え抜いた末の言葉のようにも思える。子供にも彼自身に知られぬ意志がある。

お互いさまでわけが判らぬ中に、父は自分を遺し、自分はこの子を遺している。父のそのいい置きを伝えた母は、また、その実家の罪滅しのためとて、若い身空ですべての慾情を断ったつもりでも、食意地だけは断たれず、嘆きつつもそれを自分の慾情の上に伝えている。