Classiques japonais avec furigana
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くびをうしなったとんぼ
首を失った蜻蛉
佐左木 俊郎
Lisez 首を失った蜻蛉 (くびをうしなったとんぼ) de 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 704 caractères · 10 écrans
彼はかたいじになって、今度は、蜻蛉の胸のあたりに喰い付いている一群に、煙草の吸い差しを押し付けようとした。すると、執拗に喰い付いていた蟻どもも、火の熱さには耐えかねて、遂にその群は散り始めた。そしてその煙草の火が蜻蛉の身体に触れたと思った瞬間に、既に首を失っている蜻蛉の屍は、ばたばたっと暴れまわった。彼は驚いた。全く死にきってしまって、小さな蟻の群に運ばれつつある蜻蛉の屍が、急に暴れまわったのであった。まだ死にきらずにいるのならともかくも、既に首さえも無い屍が、何によってその運動を支配されているのだろうと思った。首の無い蜻蛉が……。
彼は幼い時分に、春先の野路に、暖かい陽光を浴びて、ちょろちょろと遊んでいる蜥蜴に、石を投げつけた事があった。するとその尾が切れて、ぴんぴんとその辺を跳ねまわった。その時はただそれを不思議に思っただけで深い疑問を抱きはしなかったが、後になって、蜥蜴の尾の、胴体と別々の運動をするのは、別れたその瞬間に、痛いと働いている神経が、連続的に、切れた後までもその尾の中に働いているのだと思った。だが蜻蛉の場合は、既に神経の運動を掌るものを失っているのだ。