Classiques japonais avec furigana
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さかなのじょぶん
魚の序文
林 芙美子
Lisez 魚の序文 (さかなのじょぶん) de 林 芙美子 (はやしふみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 384 caractères · 21 écrans
「いくらになるンだい?」
「十八銭よオ……」
「おい、十日で十八銭じゃないのかい?」
「着物縫うより、こちらがよっぽどいいわ。土の匂いッてちょっといいわよ。……待っていらっしゃい。今手を洗って行くから……」
彼女が手を洗って来ると、僕は茶ぶ台の上に五拾銭玉一ツと五銭玉一ツを並べた。
「まア! お腹空いてンだからあんまりおどかさないでよ」
そんでも嬉しそうであった。彼女は急にせわしそうに、台所に立って行くと、馬穴をさげて井戸端へ水を汲みに出た。茶ぶ台に置かれた空鑵の中には、四匹のみみずが、青く伸びたり紅く縮まったりしている。
夜。
雨が降りだしたのか、窓の外の桐の葉がザワザワ鳴っている。彼女は机に凭れて何か書いている。
「そいでね、その二ノ宮ッて家は、まるで壁ばっかりなんだよ。君だったら何と云うかなア、庭ときたら手入れは行きとどいているが、まるで廃園さ、君だったら大根植えるといいと云い出すかも知れないね。だが、あんな壁ばっかりじゃアやりきれないよ。空一ツ満足に見えないンだからねえ暗くて……」
「空の見える気持ちが、そンな人達、誰かに覗かれるようでこわいンでしょうねえ」