Classiques japonais avec furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lisez 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) de 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 127 675 caractères · 254 écrans
於菟さんを非常にかわいがっていられたのですから、分ったらさぞ喜ばれたでしょう。
若い時から身だしなみのよい人だったそうで、老いてからも毎朝丁寧に手水を使い、切下げの髪を綺麗に撫でつけて、火鉢の側にきちんと坐っていられるのでした。毛筋は細く柔かで、茶色になっていましたが、白髪は終るまで一本もないのが不思議でした。小作りな痩せ形な人で、色は浅黒く、人並より鼻が高いのでした。歯は入歯でしたが、それが鉄漿でも附けたかのように真黒で、黄楊で造らせたとのことでした。
その切下げの髪で思出したのですが、私を毎朝小学校まで、運動がてら送って下すっていた頃、帰りに巡査が呼止めて、「いつその髪を切ったのか」といったのです。咎められたと思った祖母は腹を立てて、「ちゃんと届がしてあります。家へお出なさい、見せますから」といったら、そのまま行ってしまったとのことでした。父は笑って、「咎めたのではないでしょう。誰か親戚の人にでも髪を切らせようと思って聞いたのかも知れません」といわれました。
祖母はその頃六十位でした。まだ職人などには、男でも結髪の人をよく見かけた時代で、断髪令というものが出たと聞いたことがありますが、まさか届を出したのでもないでしょう。