Classiques japonais avec furigana
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まど
鷹野つぎ――人と文学
鷹野 つぎ
Lisez 鷹野つぎ――人と文学 (まど) de 鷹野 つぎ (たかのつぎ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 840 caractères · 43 écrans
いやそうでも思わなければ、嫂に遇うた場合の時のように、とよ子の泣き出さぬ気持は解けなかった。
ふと次兄は私のベッドの方へ、踵をかえして近づいて来た。
「いやどうもいろいろお世話になります。あの娘の病気以来、故郷の母は死ぬやら、私どもも実に不幸つづきで……」
「お察しいたします」私も一礼した。
「何しろ兄なぞは故郷を出てから、しばらくはあの娘の生れたことも知らなかったくらいで、私なぞもごく幼さい時から別れていましたんで、妻なぞは、あの娘が母と一緒に上京してきた時になって、はじめてこんな妹があったのかと、驚いたくらいでしてね……」
「折角あんなにおおきくおなりになったお妹さんでしたに御病気なすって、ほんとにお察しいたします」
「これからというたのしみもありましたがなア」
次兄は仰向いて嘆息した。
私はどういうものか自分の方からは何も云い出せなかった。とよ子に附添婦の必要なこと、切端つまった際であることなども、勿論云い添える気持など出て来なかった。それよりも、とよ子に間近いベッドにいる自分に、求めずしていろいろの事情が既に耳に伝わっていたことや、殊に今この室の間近くならんだ二つのベッドの様子を目撃した上は、一層ひとぎきというものをかれが、意に止めていることを私は見てとらずにいなかった。