Classiques japonais avec furigana
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あとがき(『みやもとゆりこせんしゅ』うだいにかん)
あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)
宮本 百合子
Lisez あとがき(『宮本百合子選集』第二巻) (あとがき(『みやもとゆりこせんしゅ』うだいにかん)) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 466 caractères · 5 écrans
遠くに白山山脈の見えるその村は、水田ばかりであったから、七、八月のむし暑さは実にひどかった。涼しいはずの茅屋根の下でも、吹きとおす風がないのだから、汗ふき手拭がじきぬれた。老人は、毎日毎日汗をふきながら机に向っているわたしを可哀そうに思って、ある日、河原から幾背負いもの青葦を苅って来て、それを二階の窓の下につき出た木片ぶきのひさしにのせてくれた。こうすれば反射がよわくなっていくらか凌ぎよいものだ、と云って。
厚くしかれた河原の青葦は、むんむんと水気を蒸発させ、葦が乾いて段々枯れてゆくきつい香りを放散させ、わたしは目がくらみそうだった。それでも八月の二十日すぎて東京へかえるとき「古き小画」は出来あがった。
「古き小画」は宮原晃一郎氏を通じて小樽新聞にのせられた。そのきりぬきをこしらえてもっていた。何年の間、わたしはそのきりぬきをもっていただろう。それはいつか失われてしまった。
選集へどんな作品をのせるかという話が出たとき、わたしは絶えて久しいこの「古き小画」のことを思い出した。こんな風に古い物語を書いたりしたたった一つの作品であるし、今は忘れてしまっているその作品が、当時の自分によってどんなに扱われていたろうかという点にも興味があった。