Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lisez あなたも私も (あなたもわたしも) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 133 405 caractères · 263 écrans
十月はじめの長雨で、湿気のしみ通った化粧箱が、棚の中段にチョコンと載っている。外套掛けには、袖口のすりきれた薄地のコートが、仕留められたケモノの皮のように、あわれなようすでグッタリとつるさがっている。間代のカタに、持物をおさえられてしまったので、身につくものといえば、上と下が色のちがう古ぼけたセパレーツと、コートと化粧箱だけ。
夏の終りに、秋川の家で受けた心のこもったもてなしのことを、フト思いだす。
「あの約束も、まだ果していない……」
東京へ帰ったら、いちど秋川をたずねると、愛一郎と約束をしたが、こんなようすになりはてては、とても出かけて行く気にはなれない。みじめになって、心が傷つくだけのことだから。
霧がうごき、上げ潮の黒い水の色があらわれだしてくる。ポンポン蒸気が、待っていたように、窓の下の掘割へあがってきた。
しばらく怠けていたが、きょうからまた都会の雑踏のなかで、無慈悲な肱や拳で突きまくられながら、職安を回って仕事を捜して歩かなくてはならない。
「仕事が無かったら、今夜は、どこで寝るのかしら」
秋ざれの寒むざむしい町のなかを、宿るあてもなく歩きまわるのは辛いことだが、友だちというのでもない大矢シヅの世話になっているより、よほどサッパリする。