Classiques japonais avec furigana
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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
Lisez うすゆき抄 (うすゆきしょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 30 454 caractères · 59 écrans
下司どもに担がせて座敷へ移すと、間もなく息をふきかえし、照れでもするどころか、
「父上、すんでのことに仕止められるところでしたな。いくら面甲をつけているからといって、現在、血を分けた自分の伜の身ざまが見抜けぬとは、情けない」と大口をきいた。
なんのつもりでこんな装束をし、小夜更けの庭先なぞへ出て来たのかとたずねると、
「あなたはご存じなかったでしょうが、妹めはとんだ猫かぶりで、評判どおり、谷戸の貧郷士を呼びこみ、抱きつくやら、しなだれるやら、さんざんな放埓をするのです。陽の照っている間は、あんなとりすました顔をしているが、乱破くずれの小伜に抱かれているときは、どんな甘ったれたことをぬかすか、聞いてやりたいと思って」などと愚にもつかぬことをいう。
見ればみるほど腹のたつようなたわけだが、地獄を覗いて戻って来たいま、こんな馬鹿な伜でも抱きよせたいほど可愛く、うなずきながら聞いていると、道長が図に乗ってこんなことをいった。
「そんな笑いかたをなさるところをみると、私を馬鹿だと思っていられるのでしょうが、あなたが考えているようなものでもないのです。妹のためにもならないし、言えばびっくりなさるだろうから言わずにいましたが、上の谷戸で貧郷士に化けこんでいるあいつこそは、風摩小太郎の現在の忘れがたみなのです」