Classiques japonais avec furigana
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おじさんのはなし
おじさんの話
小山 清
Lisez おじさんの話 (おじさんのはなし) de 小山 清 (こやまきよし) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 21 232 caractères · 42 écrans
蠣殻町というところは株屋のあるところである。日曜祭日で株屋が休みの日か、雨降りの日以外は、一日も欠かさずに出かけていく。おじさんはべつに株屋の番頭をしているわけではない。これはおじさんにとっては道楽と云うべきか、これもまた商売と云うべきか、または病いと云うべきか、ともかく熱心なものであった。病いならば、もはや膏肓に入る感じであった。よくは知らないが、おじさんは行った先で同好の士と、その日の株の上り下りにことよせて、御法度の賭けごとをするわけなのである。
おじさんはなにやらいっぱい書き込みをしてある手擦れのした手帳や、色鉛筆で図表の引いてある、これもまたいい加減けば立った方眼紙を持っていた。これはいわばおじさんの商売道具のようなもので、おじさんが手頸にぶらさげて持参する袋の中の代物は、すなわちこれであった。おじさんはときおり、老眼鏡や虫眼鏡をたよりにして、鉛筆をなめなめ、むずかしい顔つきをして、手帳や方眼紙を覗いていた。
「近頃はどうかね。儲かるかね。」
と訊くと、
「さっぱり儲からないよ。」
と苦そうに笑いながら云う。私はべつに賭博好きというわけではないが、それでも、おじさんの止められない気持は、察しのつかないことはない。