Classiques japonais avec furigana
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すみだがわ
すみだ川・新橋夜話 他一篇
永井 荷風
Lisez すみだ川・新橋夜話 他一篇 (すみだがわ) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 44 378 caractères · 88 écrans
九段、市ヶ谷、本郷、神田、小石川方面のお方はお乗換え――あなた小石川はお乗換ですよ。お早く願います。」と注意されて女房は真黒な乳房をぶらぶら、片手に赤児片手に提灯と風呂敷包みを抱え込み、周章てふためいて降り掛ける。その入口からは、待っていた乗客が案外にすいている車と見るやなお更に先きを争い、出ようとする女房を押しかえして、われがちに座を占める。赤児がヒーヒー喚き立てる。おしめが滑り落ちる。乗客が構わずそれをば踏み付けて行こうとするので、此度は女房が死物狂いに叫び出した。口癖になった車掌は黄い声で、
「お忘れものの御在いませんように。」と注意したが、見るから汚いおしめの有様。といって黙って打捨てても置かれず、詮方なしに「おあぶのう御在いますから、御ゆるり願います。」
漸くにして、チインと引く鈴の音。
「動きます。」
車掌の声に電車ががたりと動くや否や、席を取りそこねて立っていた半白の婆に、その娘らしい十八、九の銀杏返し前垂掛けの女が、二人一度に揃って倒れかけそうにして危くも釣革に取りすがった。同時に、
「あいたッ。」と足を踏まれて叫んだものがある。半纏股引の職人である。