Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

そのきどをとおって

その木戸を通って

山本 周五郎

Lisez その木戸を通って (そのきどをとおって) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 448 caractères · 44 écrans

Aozora Bunko

八

そんなことが三十日ほど続くと、やがて彼も肚をきめた。

「いいじゃないか」と彼は自分に云った、「思いだした過去がどうであろうと、こっちはもう結婚してしまったし、身ごもってさえいるんだ、条件がどんなに悪くとも、この生活を毀すことができるものか」

正四郎は力んだ気持で、どんな相手があらわれようと決してあとへはひかぬぞ、と思った。

その後はなにごともなかった。ふさの躯は順調で、ちょっと夏痩せはしたが、秋になるとすっかり健康を恢復し、十月中旬に女の児を産んだ。赤児も丈夫だし、母躰にも異状はなかった。ふさは恥ずかしそうに、女の子ではお父さまががっかりなさるでしょう、と云った。正四郎は首を振って、江戸には男の孫があるから、女の子のほうが却ってよろこぶだろう、と云った。――父の来るまで出産のことは知らせずにおくつもりだったが、信濃守景之が寺社奉行に任ぜられたため、父の来られないことがわかったので、半月ほどおくれたが、手紙で出産のことを知らせた。

八

子供には正四郎の母の名をもらってゆかと付けた。

「いいお名だこと」ふさはうれしそうに、産褥で赤児に頬ずりをした、「――ゆかさん、可愛いきれいなゆかさん、お丈夫に育ってちょうだいね」