Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しゅんきんしょう

ちくま日本文学014 谷崎潤一郎

谷崎 潤一郎

Lisez ちくま日本文学014 谷崎潤一郎 (しゅんきんしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 85 196 caractères · 169 écrans

Aozora Bunko

母も恐らくは新町の館でこの文を受け取った時、やはり自分が今したようにこれを肌身につけ、押し戴いたであろうことを思えば、「昔の人の袖の香ぞする」その文殻は、彼には二重に床しくも貴い形見であった。

その後津村がこれらの文書を手がかりとして母の生家を突きとめるに至った過程については、あまり管々しく書くまでもなかろう。何しろその当時から三四十年前と云えば、ちょうど維新前後の変動に遭遇しているのだから、母が身売りをした新町九軒の粉川と云う家も、輿入れの前に一時籍を入れていた今橋の浦門と云う養家も、今では共に亡びてしまって行くえが分らず、奥許しの免状に署名している茶の湯、生け花、琴三味線等の師匠の家筋も、多くは絶えてしまっていたので、結局前に挙げた文を唯一の手がかりに、大和の国吉野郡国栖村へ尋ねて行くのが近道であり、またそれ以外に方法もなかった。それで津村は、自分の家の祖母が亡くなった年の冬、百ヶ日の法要を済ますと、親しい者にも其の目的は打ち明けずに、ひとり飄然と旅に赴く体裁で、思い切って国栖村へ出かけた。

大阪と違って、田舎はそんなに劇しい変遷はなかったはずである。