Classiques japonais avec furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans
見せてよ。わたしまだ知らないんだからさ。」
「はい。よく御覧なさい。」と以前の女が差付ける雑誌の挿絵。見れば、縁側に腰をかけている夫人風の女の姿で、「名士の家庭。」「創作家清岡進先生の御夫人鶴子さまのお姿。」としてあった。
「君江さん。あんた、何ともない事。そんなもの見て。わたしなら破いてしまいたくなるわ。」と写真の上に南京豆を打ちつけたのは、もと歯医者の妻で生活難から女給になった鉄子である。
「あなた。随分焼餅やきねえ。」と君江はかえって驚いたように鉄子の顔を見返して、「いいじゃないの。奥様なら奥様で。気にしないだって。」
「君江さんは全く徹底しているわ。」とダンス場から転じてカッフェーに来た百合子というのが相槌を打つと、もとは洋髪屋の梳手であった瑠璃子というのが、
「とにかく一番幸福なのは清岡さんよ。令夫人はシャンだし、第二号は銀座における有名なる女給さんだし……。」
「ちょいと何が有名なのさ。止して頂戴よ。」と君江はわざとらしく憤然と椅子を立って、先刻から打捨てて置いた自動車商会の矢田さんの方へと行ってしまった。女たちは無論戯れとは知りながら、少し心配したように斉しくその後姿を見送ったが、瑠璃子はもともと梳子の時分ないない私娼窟に出没して君江とも一、二度言葉を交えた間柄。