Classiques japonais avec furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lisez つゆのあとさき de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 74 725 caractères · 148 écrans
芸者よりも濃厚だっていうのか。」
「それァ勿論そうよ。まアお聞きなさいよ。虚言見たようなはなしだけれど……。」
駒田はとにかく長く話をさして置いてはいけないと、気転をきかして、「おい。さっき呼んだ芸者はどうした。催促するようにそう言って来い。」
「はい。」と立上ったのは若い方の芸者なので、駒田は更に、「おれはそろそろ飯をくおう。」
「僕もつき合いましょう。」と酒を飲まない記者が駒田に同意した。御飯の給仕やら番茶の入替やらで、どうやら年増芸者のはなしも中絶した時、辰千代という女が明けてある襖の外に手をついた。
年は二十ばかり。つぶしの島田に掛けたすが糸も長目に切り、薄紫に飛模様の裾を長々と引いているので、肉付のいい大柄な身は芸者というよりも娼妓らしく見られた。
「銀座にいたのはお前か。」
「ええ。そうよ。」と辰千代はむしろ得意らしい調子で、「あっちでお目に掛かったか知ら。何しろわたし眼がわるいんでしょう。だから失礼ばっかりしているのよ。」
年増の芸者は辰千代が自分の方には見向きもせず独りでぺらぺらしゃべり続けるのを、さも苦々しそうに尻目に見返したが、此方は一向気がつかない様子で、さされる盃を立てつづけに二杯干して若い記者に返しながら、「こっちへ来てから一度も銀座の方へ行かないから、きっと変ったでしょうね。