Classiques japonais avec furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lisez わが町 (わがまち) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 840 caractères · 186 écrans
客は小憎いほど落ち着いて、世間話のまくらをだらだらとふった。
それで焦らされて、おたかはわざと濃い表情も自然に装えて、顔をしかめた。すると、縁談をきく心用意もどうやら出来たが、そうして落着いたところは、意外にも断る肚であった。
相手の身分も訊かぬうちに、そんな風に決めて、われながら意固地な母だったが、いまに始ったわけではない。
……父親の生きていた頃、三度義枝に縁談があったことはあった。
相手は呉服屋の番頭、公設市場の書記、瓦斯会社の集金人と、だんだん格が落ちた。
父親はいつのときも、賛成も反対もせず、つまりは煮え切らず、ぼそぼそ口の中で呟いているだけだったが、おたかはまるで差し出でて、仲人に向い、
「格式の違うことあれしまへんか」
と、いつもこの調子で、仲人を怒らしてしまい、その都度簡単に話は立ち消えたのだ。
当座の小気味良さも、しかし、あとでむなしい淋しさと変った。だから、義枝には、
「あんな仕様むない男に貰われたら、お前の一生の損やさかいに……」
と言い聴かせ、それをまた自分へのいいわけにもした。
よその娘なら知らず、義枝の父親は理髪業者の寄合へ洋服で出席した最初の人で、なお町会の幹事もしているのだ……。