Classiques japonais avec furigana
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わがまち
わが町
織田 作之助
Lisez わが町 (わがまち) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 93 840 caractères · 186 écrans
半年ほど勤めたある朝、主任が、
「今日は忘れんように、萩の茶屋の大西いう質屋へ廻ってんか」
と、言った。
「あそこは五日ほど前廻ったばっかしでっけど……」
用事は電話機の消毒でも、さすがに質屋の暖簾をくぐるのは恥かしいという気持ばかりでもなく、そう言うと、
「そら判ってる。五日まえに行ったことは判ってる」
主任はなにかにやついて、
「――とにかく行ったってんか」
変だなと君枝は思ったが、
「卓上(電話)でも引きはったんでっしゃろか」
と、いいつけ通り、とにかく行くことにした。
「じゃあ、これ持って行きなはれ」
主任はめずらしく、市電の回数券を二枚ちぎってくれた。
動物園前で市電を降り、食物屋や雑貨屋がごちゃごちゃと並んだ繁華な大門通りを抜けて、大門の近くで右へ折れると、南海電車の萩の茶屋の停留所の手前に、
「ヒチ、大西」
と青い暖簾がかかっていた。
入口でちょっとためらい、ちらとそのあたりを見廻してから、
「今日は」
と、はいって行くと、
「おいでやす」
文楽人形のちゃり頭(かしら)のような顔をして格子のうしろに坐っていた丁稚(でっち)が、君枝の顔を見るなり、
「電話のお方が来やはりましたぜエ」