Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
』
『何かの嫌疑をかけられても、どうも已を得ません。』
『ともかく、こうした際にあっては、極く些細な秘密も大きな疑いを招くことがあります。お互いに面倒なわけです。』
『けれども、その反対の場合もあると思います。』葛飾は唇を噛んだ。
ところが、この時突然美代子が泣き出したのである。
『わたくしが、小野さんを殺したのも同じでございます。ただただわたくしの浅果なたくらみからでございます――』彼女は泣きじゃくりながら、そう云うのだ。
役人たちはそれぞれに頷き合った。
2
さて美代子の陳述は大体次のようである。――
美代子は葛飾の妻だが、葛飾よりも小野の方を先に知った。当時、美代子は悪く凝り過ぎたため却って盛らない場末の酒場の女給で、小野はそこの酔っぱらいの常客だったのである。美代子と小野とが可なり懇意な口を叩ける程になった頃、或る晩葛飾は初めて小野に連れられて来た。葛飾は却々男前もよかったし、それに勇気がある。葛飾は一目で美代子を見初めてしまった。『葛飾の女房になって、三人で一緒に暮そうじゃないか――』と、橋渡しは小野の役だった。
これは後になって解ったことだが、葛飾は親譲りの銀行預金だけで不自由なく暮して行ける身分である。