Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
と、壊れたのような声を出したので、吃驚して逃げ出しました。
『誰が、そんな声色を聞かしてくれって云って?』エミ子さんは癇癪をピリピリさせて、可哀相なピアニストを叱りつけました。『あんまり見っともない真似をすると、ほんとに追い返すわよ。』
『だって、初めっから、僕が来たいって云い張ったんじゃないんですからね。』雄吉君は鼻をならしました。『僕たちは一体この春の最も楽しい一日に、何しに此処迄出かけて来たのかしら。徒らに……』
『お黙んなさい。あんたは唯あたしの御亭主として、恥しくないように控えていればいいのよ。』
『だって、御亭主なら御亭主らしく、女房の腕をかかえるとか何か、もっとこう、幸福感を味わう機会があってもいい筈です。』
『贅沢云うなら、サッサと帰って頂戴。そんな幸福感を味わっちゃったら、あんたはあたしを、恰で女房かなんかのような気がするでしょうよ。馬鹿々々しい!』
『エミちゃんは、どうしてそうロマンティストになり切れないのかなあ。』
『背負ちゃ駄目よ。――それよりか、ちょいと水族館でも覗いて見ないこと?』エミ子は、ぶすぶす云っている雄吉君を連れて水族館へ入りました。