Classiques japonais avec furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lisez アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) de 渡辺 温 (わたなべおん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 129 168 caractères · 267 écrans
秋口に入って、僕が寝起にも自由を欠く程の有様になってから、幸子さんは泊りがけで看病に来てくれたが、併しそれと同時に、最早や単に情慾なぞと云う生やさしいものではなく、もっと執拗な純然たる復讐の形の下に、たとえ破れかぶれであろうともこの目的を果さなければならないと決心するに至った。僕は到頭或る晩のこと、四辺に幸子さんの外誰もいない時を見計って、幸子さんに向って、僕は久しい歳月の間一時だって幸子さんを忘れたことがなく、どんなに恋しがっていたかを、泪ながらに打ち明けた。ところが、僕がくどくどと掻き口説くのを黙って聞いていた幸子さんは、いきなり、僕の、熱のためにカサカサ乾いた唇へ接吻したではないか。そして――ごめんなさいね。でも、今では、あたし、あんたよりも晃一さんの方が好きなんですもの。」とそう云うのだ。僕は胸を轟かせながら、あらためて云った。――それは僕にだってよく解っている。それに僕はこれから先ほんの僅しか生きられない人間だ。決して、兄貴を振捨てて、縒を元へ戻してくれと云うのではない。それどころか、こうして幸子さんに看護されて死ぬことが出来るのを、何より嬉しく思って感謝している位だ。