Classiques japonais avec furigana
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カンカンむしさつじんじけん
カンカン虫殺人事件
大阪 圭吉
Lisez カンカン虫殺人事件 (カンカンむしさつじんじけん) de 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 237 caractères · 21 écrans
『少しお訊ねしますがね。この造船所の構内で、茲一両日の間に、誰れか誤って機械油をぶちまけて了った、と言う様な事はなかったでしょうか? ほんの一寸した事でいいんですが――』
喬介の突拍子もない細かな質問を受けて、若い技師はいささか面喰った様子を見せたが、間もなく私達の眼の前の船渠を指差しながら口を切った。
『その二号船渠で、昨日油差しを引っくりかえした様でした。何んでしたら御案内しましょう。』
技師はそう言って、私達を連れて歩き出した。間もなく私達は、その大きな空の乾船渠の底へ梯子伝いに降り立った。技師は、海水を堰塞している船渠門の扉船から五六間隔った位置にやって来ると、コンクリートの渠底の一部を指差しながら私達を振り返った。
『こ奴なんですがね。――』
成る程其処には、三尺四方位いの機械油の溜りが、一度水に浸されたらしく半ばぼやけて残っている。その溜りの中央が、丁度被害者の背中でこすり取られたらしく、白っぽいコンクリートの床を見せて、溜りを左右二つに割っている。
『誰がこぼしたんです?』
『水夫です。五日前の朝から昨晩まで修繕の為めに入渠していた帝国郵船の貨物船で、天祥丸と言う船のセーラーです。