Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

キャラコさん

キャラコさん

久生 十蘭

Lisez キャラコさん de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 277 caractères · 21 écrans

Aozora Bunko

それから、ベンチへ帰ってきて、ゆっくりと風呂敷包みをとく。こんなことをいっては申し訳ないのだが、その握飯は、びっくりするほど黒い色をしている。それに、二つに割ったその芯には、何ひとつ慰みになるようなものもはいっていない。

老人は、それを大切そうに両手のなかで捧げ持って、舌づつみをうちながらゆっくりゆっくり食べはじめる。ひと口頬張っては、この世にこれ以上の珍味はないというふうに、

「うむ」

と、感にたえたような声をだす。

老人は、上顎にも下顎にも一本も歯がないと見えて、口をムグムグやるたびに、皺だらけの頬がじつに奇妙な動きかたをする。上唇と下唇がいっしょくたになって、鼻の下まで飛びあがり、唇の両端が耳のそばまであがっていって、お能の翁の面のような、なんともいえぬ味わいの深い顔になる。

老人は、勿体なそうに、ひと口ずつたいへん手間をかけて食べる。しかし、世にも楽しそうなこの食事も、そうながくかかるわけではない。握飯は子供の握り拳ほどの大きさしかないので、まもなくすんでしまう。

老人は、指についた飯粒を唇でていねいにひろいとり、よれよれになった風呂敷を畳んで膝のうえにおくと、後味をたのしむように、うっとりとした顔でしばらくじっといる。