Classiques japonais avec furigana
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きなだむら
ゼーロン・淡雪 他十一篇
牧野 信一
Lisez ゼーロン・淡雪 他十一篇 (きなだむら) de 牧野 信一 (まきのしんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 27 321 caractères · 54 écrans
親密の具合が猿のようだ。父と子であるからにはよほどの年齢が相違するだろうにもかかわらず、二人とも四十くらいに見え、言語は聞直さないといかにも判別も適わぬ不明瞭さで、絶間もなくもぐもぐと喋り続けるにつれて口の端に白い泡が溢れた。そして、手の甲で唇と舌とを横撫でして、おまけにその手の甲を何で拭おうとするでもなく、そのまま頭を掻いたり肴をつまんだりした。指の先は始終こせこせとして皿や小鉢を他人のものも自分のものもちょっちょっと位置を動かしたり、いろいろの食いものをほんの豆の端ほど噛んで膳の縁に置き並べたり、その合間には小楊枝の先を盃に浸して膳の上に文字を書いた。癖までが全く同じようで、松が時々差挟む「阿父さん」という声に気づかなければ、双児のようだった。
法螺忠は何か一言いうと、あははと馬のように大きな黄色の歯をむき出して笑い、それにつれてゲーッ、ゲーッと腹の底から込みあげる蒸気のようなゲップを遠慮会釈もなく放出して「どうも胃酸過多のようだ。」と呟きながら奥歯のあたりを親指の腹でぐいぐいと撫でた。鼻はいわゆるざくろ鼻というやつだが、ただ赤いばかりでなく脂光にぬらついて吹出物が目立ち、口をあくごとに二つの小鼻が拳骨のように怒り鼻腔が正面を向いた。