Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ボニンとうものがたり

ボニン島物語

久生 十蘭

Lisez ボニン島物語 (ボニンとうものがたり) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 772 caractères · 41 écrans

Aozora Bunko

清兵衛は、なぜか急に狼狽して、「異人といっしょに居りましたのは、ほんのひと時で、間もなく、私らだけで、ほかの島に移りました」

清兵衛らの移ったのは、ペール島の北にある、周り十里ほどの島で地味が肥え、黒土が六尺もあって、なにによらず、蒔いてものの成らぬということはない。林を開いて切替畑もつくったが、そこも物成りの早いところで、果実の種を捨てると、いきなり木になってしまうので、うっかり種も捨てられず、かえって迷惑した、などと語った。

深志は笑って、

「それはまた、大した島だ。このあたりの痩せ枯れた地味にくらべると、まるで夢のような話ではないか。そんな安楽世界に住みながら、やはり日本が恋しくなったのか」

清兵衛は慇懃にうなずくと、真北のほうを指して、「ちょうど霧隠れになっておりますが、あれは恐山といって、北郡のしるしになる山でございます。あれをひと目見たいばかりに」

庄吉が、また大きな声をだした。

「嘘つけ、清兵衛」

深志は眉の間に皺をよせて、

「こら、話の邪魔をするな。お前は向うの水沢のそばへでも行っていろ。話がすんだら呼んでやる」

庄吉は急におとなしくなって、言われたように斑雪の残った水沢のほうへ行くと、こちらに背を見せて枯蘆の間に坐った。