Classiques japonais avec furigana
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ボニンとうものがたり
ボニン島物語
久生 十蘭
Lisez ボニン島物語 (ボニンとうものがたり) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 772 caractères · 41 écrans
濠端の久太夫と赤木屋の手代は、活人画中の人物のように、ものの四半刻ばかり、そこで凝り固まっていたが、そのうちにどちらの顔にも疲労の色が濃くなり、斬るか斬らせるか、一挙に埓をあけなければ、このうえは、ひと時も保合えぬようなところにまで迫ってきた。
久太夫は貧苦で削ぎたった頬をひきつらせ、虚空を睨んでニヤリと笑い、「貧はすまじきもの」などと独語をいい、血走った眼で手代の顔を睨みつけていたが、
「下郎め、うぬがために、終生の恥辱をとったぞ」と大喝するなり、手代の真向へ、やツとばかりに竹光の刃を立てた。
赤木屋の手代は、ひえツと息をひき、のけ反ったままぬかるみにへたりこみ「斬りやがった、斬りやがった、あゝ、ひどいことをする」と頭をおさえて子供のように泣きじゃくっていたが、身に受けた傷が、蚯蚓腫れほどでもないことをさとると、俄かに立ちあがって、
「なんだ、竹箆か。うぬは、これで何度そくいいを練りやがった。刃傷の証拠にする。それをこっちへよこせ」といいながら、諸手で刀身に掴みかかった。
これをとられると、恥の上塗り、久太夫は狼狽して、
「なにをする。これ、手を離せというのに」