Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ひとあしおさきに
一足お先に
夢野 久作
Lisez 一足お先に (ひとあしおさきに) de 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 40 200 caractères · 79 écrans
その時に私はチョット驚いた。……ここは一体どこなのだろう。俺は松葉杖を持たないまま、どうしてコンナ処まで来ているのだろう。そもそも俺は何の用事があってコンナペンキ塗りの扉の前にヘバリ付いているのだろう……と一生懸命に考え廻していたが、そのうちに、廊下の外れから反射して来る薄黄色い光線をタヨリに、頭の上の鴨居に取り付けてある瀬戸物の白い標札を読んでみると、小さなゴチック文字で「標本室」と書いてあることがわかった。
それを見た瞬間に私は、私の立っている場所がどこなのかハッキリとわかった。……と同時に私自身を、この真夜中にコンナ処まで誘い出して来た、或るおそろしい、深刻な慾望の目標が何であるかという事を、身ぶるいするほどアリアリと思い出したのであった。
私はソレを思い出すと同時に、暗がりの中で襟元をつくろった。前後を見まわしてニヤリと笑いながら、タオル寝巻の片袖で、手の先を念入りに包んで、眼の前の青ペンキ塗りの扉に手をかけたが、昼間の通りに何の苦もなく開いたので、そのまま影法師のように内側へ辷り込んで、コトリとも云わせずに扉を閉め切る事が出来た。
向うの窓の磨硝子から沁み込む、月の光りに照らし出されたタタキの上は、大地と同様にシットリとして冷めたかった。