Classiques japonais avec furigana
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さんにんきょうだい
三人兄弟
菊池 寛
Lisez 三人兄弟 (さんにんきょうだい) de 菊池 寛 (きくちかん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 630 caractères · 22 écrans
二里も歩きました時、黄色い稲田の向うに、青空に聳えている五重の塔が見えました。
「ああ、もう都もすぐだぞ。」と、一郎次は小躍りして喜びました。
ところが、丁度そのとたんでした。道の行手に、砂けむりが立ったかと思うと、その砂けむりの中から、一頭の白い牡牛が太い鉄のような角を左右に振り立てながら、飛ぶように走って来ました。きっと、この牛は何かに驚いて、気が狂ったのでしょう。両の目は、炎のように真赤で、眼の前にあるものは何でもその角で突きかけようとするような勢です。
一郎次は、その怖しい勢を見て、体を道傍へ除けようとしましたが、牡牛はかえって一郎次の方へ真直ぐに突き進んで来て、アット思う間もなく、一郎次を二つの角で引っかけたかと思うと、一間あまりも投げ飛ばしたまま、また砂けむりを蹴立てて走って行きました。
投げ飛ばされた一郎次は、右の腋の下に刀で刳るような痛みを感じました。彼は、もう死ぬような気がしました。
「ああ、俺は一番損な道を来たものだ。右の道を来たために、都の入口で死ななければならぬか。」と、心の中で思いました。が、その中に傷の痛みが強くなって、いつの間にか気が遠くなってしまいました。