Classiques japonais avec furigana
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さんじゅうにこく
三十二刻
山本 周五郎
Lisez 三十二刻 (さんじゅうにこく) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 15 273 caractères · 31 écrans
味方の加勢を呼ぶ声が起り、けたたましい喚声が邸内に飛び交った。
――あの火薬さえあったら。
図書はさっきからその事を考えていた。ここで鉄砲が使えたら、引付けるだけ引付けておいて、つるべ討ちに浴びせ、怯む隙に斬って出て一挙に決戦することができたのに。
――なぜ火薬を水浸しにしたのだ。しかもこのおのれが命ずる事をしたという。
わっという鬨声が西の脇門で起った。築地塀が突崩されたのであろう。重々しい地響きに続いて、味方の呼交わす鋭い叫び声が聞えた。
「六郎右衛、見てまいれ」
「はっ」
縁下に控えていた家扶が走っていった。
宇女は薙刀を持直した。危険が迫ったとみたのであろう。図書はその横顔にちらと眼をやったが、彼女の眉宇は静かで、呼吸も常に変らず落着いている。そして必死の決意だけが、薙刀を握るその手指にはっきりと現れていた。
六郎右衛門がはせ戻ってきた。
「申上げます。西の脇御門に沿って六尺あまり、築地塀が突き崩されました。十二三名斬込んでまいりましたが、これを斬って取りましたので、後手は続かぬ模様でござります」
「穴はすぐ塞がねばならんぞ」
「防材を集めてやっております」