Classiques japonais avec furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lisez 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 698 caractères · 42 écrans
草鞋を取るやら脚絆を取るやら、二人がかりで大騒ぎをして三十郎に足洗をつかわせると、手を取らんばかりにして囲炉裏のそばへ連れて行き、それ飯を焚げ、風呂を沸かせ、柿の葉鮨でもつくらんか、糀漬の鶫をいださんか、お平ははんぺんにしょうず、初茸はおろしあえにしょうず、いや、お坪がよかろうずと腰をまげ、あたふたと家もせましと慌てまわるのである。
そういう騒ぎを聞きつけたふうにして、昨夜の女のひとが奥から走り出してきた。
顔中眼になったような顔で、
「兄様、……あなた……」
と叫んだ。
三十郎は、この場面を想像して、ひょっとすると噴き出すかも知れないぞと夜っぴて閉口していた。しかしいま、そう呼びかけられると、なにかグイとしたものが胸の奥から衝きあげて、内心、にわかに襟を正したいような厳粛な気持になってきた。
おばあさんは、また涙になって、
「兄様が、逐々戻り来しぞ。のう、喜しやのう。……まず、久々の挨拶をなされ。兄様、お身もお君になんぞ話をしてやってたもい。……わしたち老人ばかりで淋しかろうというて、こうしてこんな山奥へ帰って来ておくれた。ほめてやってつかあされ」