Classiques japonais avec furigana
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ぼしぞう
久生十蘭短篇選
久生 十蘭
Lisez 久生十蘭短篇選 (ぼしぞう) de 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 48 344 caractères · 96 écrans
花売りの恰好はしていたが、花なんか売っていたんじゃない。ヨハネはなにも知らないのだと思うと、うれしくなってニッコリ笑った。
母が銀座でバアをやっていることはホノルルで聞いていた。東京に着いた晩、すぐその店をつきとめた。子供が公然とバアに入って行くには、花売りか、アコーデオン弾きになるしかない。誰だってすぐ考えつくことだ。毎日曜の夜、ぼくは母の顔を見るために、花売りになって母のバアへ入って行った。八時から十時までの間に五回も入った。店があまり繁盛していないので、母は苛々していた。
「しつっこいのねえ。いったい何度来る気? うちには花なんか買うひと、いないのよ」
と癇高い声で叱りつけた。その声が好きだった。いちどなどは、女給に襟がみを掴んでつまみだされた。それでもかまわずに入って行った。
「お前は、毎土曜の午後、朝鮮から輸送機で着くひとを、タクシーで東京へ連れて行った。アルバイトとしては金になるのだろうが、お前の英語が、そんな下劣な仕事に使われているのかと思うと、先生は情けなくなる」
それは誤解……ぼくはアルバイトなんかしていたんじゃない。母のバアがあまりさびれているので、すこしばかり賑かにしてやったんだ。