Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Lisez 二つの庭 (ふたつのにわ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 492 caractères · 389 écrans
河岸だって、この位のものを仕入れる者ア、ざらにゃいねえんだからね」
といっている魚屋の若いものの声がした。
素子がひやかしながら魚を買っている様子だった。素子は自分であれこれと選んで、気に入った魚を買うのが好きだった。
伸子は、玄関からあがって茶の間をぬけ、台所の板の間へ顔を出した。
「ただいま」
「ああおかえり」
素子のもっている吸いかけの煙草から、ひとすじの煙がゆるく立ちのぼって、それがかすかな風で日向に流れている。
伸子は玄関わきの六畳へ行って着がえをはじめた。そこへ素子が入って来た。
「動坂、どうでした?」
佐々の家を、伸子たちはその家のある町の名でよんでいるのであった。衣桁にほどいた帯をかけながら、伸子はあいまいに、
「そうねえ」
といった。
「相変らず、か……」
いくらか皮肉に素子がそういって軽く笑った。多計代と素子とは、互にまるで派があわない性格の二人の女であったし、動坂の家の気風も、伸子たちの生活気分と根本からちがった。動坂の家に一泊して来ると、伸子の心にはいつもずっしりと重い幾つもの感銘と、とけない不安とがのこされた。しかし、それは素子に一つ一つは話されなかった。