Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

一

一

看護婦は湯にはいりに出かけた。

岡部啓介はじっと眼を閉じていた。そして心の中で、信子の一挙一動を追っていた。――彼女は室の中を一通り見渡した。然し何も彼女の手を煩わすものはなかった。火鉢の火はよく熾っていた。その上に掛ってる洗面器からは盛んに湯気が立っていた。床の間にのせられてる机の上には、真白な布巾の下に薬瓶が並んでいた。机の横には、吸入器や紙や脱脂綿や其他のものがとりまとめて置いてあった。草花の鉢の土も適度に湿っていた。終りに彼女は、病人の額にのせられてる氷嚢にそっと触ってみた。指先に冷りとした感触を受くると同時に、氷の塊りが触れ合う軽い音がした。彼女はあわてて手を引込めた。それから枕頭の硝子の痰吐を覗いた。円く塊まって浮いている痰の中に、糸を引いたような血の条が交っていた。

彼女が眼を挙げると、彼女の顔を見つめている啓介の大きな眼に出逢った。

「あら、眠っていらしたんじゃないの?」

「いや。」と啓介は答えた。

「先刻から?」

啓介は首肯いた。

「看護婦さんが出かける時から?」

啓介はまた首肯いた。それからこう云い出した。

「あの看護婦は実に現金だね。