Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ふたつのみち

二つの途

豊島 与志雄

Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans

Aozora Bunko

信子がはいって来たのを見て、ぐるりと向き直った。

「何しに来ました?」と彼は云った。

信子は一足退った。それから入口の扉につかまって、眼を見据えながら唇をかんだ。

「もうあなたは私に用はない筈です。」と木下は云った。「お慈悲の涙は流して貰いたくありません。……あなた達から見たら、私の魂は汚れて醜くなってるでしょう。然し私は、自分の魂の醜さから力を汲み取っている。凡てを呪ってやる。人生を呪ってやる。呪いながら自分の魂を黒く塗りつぶすことから、私は生き上ってゆく。私は淋しい。この底の無いような深い淋しさを、骨の髄まで喰い入るような淋しさを、私はあくまで自分のものとしてみせる。私は親友を失った。愛を失った。然し生きる力は失わない。私の魂が醜くなってゆくことは私が生きてゆく証拠だ。」

木下は踵でくるりと廻った。それから卓子の上の帽子を取った。

「あなたは何を恐れているのです。何も恐れることはない。なるようになったのです。」

木下は徐かな足取りで大股に室から出て行った。信子は扉から壁へ沿って身をずらしながら、木下を通した。

彼女はそのまま壁につかまって、石のように固くなった。