Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ふたつのみち
二つの途
豊島 与志雄
Lisez 二つの途 (ふたつのみち) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 102 caractères · 104 écrans
」
彼女は涙をはらはらと膝に落とした。
「お母さん!」と啓介は叫んだ。
皆黙っていた。どうにも仕種がなかった。河村は氷嚢吊りの台木に片手でつかまっていたが、ひょいと立ち上って、木下と向い合って火鉢の側に坐った。看護婦はふと思いついたように、枕の氷を取り代えに立っていった。雅子は彼女の後を見送って、そのまま室の中を見廻した。信子が一人離れて坐っていた。信子は低くお辞儀をした。雅子も礼を返した。河村はその時、何か言葉を喉元まで出しかけたが、凡てに無関心なまでに深く考え込んでいる木下の顔を見て、口を噤んでしまった。看護婦は中々戻って来なかった。深い沈黙が落ちてきた。啓介は眼を閉じていた。
看護婦が氷枕を下げて戻って来ると、「あり難う、」と啓介は云った。
その言葉に河村は顔を上げて人々を見廻した。
「今日は実にいい天気ですね。」と彼は云った。「こんなだと、今年はわりに春が早いかも知れませんよ。私は春が一番好きです。家にじっとしてるのもいいし、昼寝をするのもいいし、外を歩くのもいいし……。そうそう、啓介は覚えてるかね。私が十二三で、啓介は五つか六つだったでしょう、よく中野や目黒あたりに出かけたもんです。